「洋楽輸入盤CD全面輸入禁止?」についてもう一度

「洋楽輸入盤CD全面輸入禁止」が実際に行われるならもちろん反対だけど、ここ数日あちこちで高まっている「洋楽輸入盤の輸入禁止に反対しよう」といったお題目だけで具体的な中身のない声はとりあえず無視でいいと思う、議員と文化庁のやりとりで今回の法律案が洋楽輸入盤にも適用が「不可能ではない」という話が誇張されて広まり、みんなテンパッちゃってるんじゃないか*1
国内アーティストの逆輸入盤の場合はそれを禁止すれば、掠め取られていた利益が国内レコード会社に戻ってきてお終いだけど、洋楽輸入盤の場合は国内盤の売り上げが上がって増えた利益を輸入盤の禁止によって損をする海外レコード会社に還流しなければならないわけで、そもそも構造が全く違う。
また洋楽輸入盤にも適用するなら「日本で販売できないことをCDジャケットに明示し、価格差も大きくなければならない」という要件を満たす必要がある。文化庁の担当者は「現状と同じ2割安程度の価格差ならば禁止できない」といっているし、輸入盤を禁止した場合に海外レコード会社が負うリスク*2を考えれば、実現の可能性は低いと思うから。
とはいえ、素人考えでは「可能性」というのが1%なのか99%なのか、その間のどこにあるかはよくわからない。そこでもっと安心するために知りたいこと、(1)洋楽輸入盤と国内盤のそれぞれの売上高を数年分(2)どの程度の価格差があれば適用が可能かの目安となる数字(3)現在の洋楽輸入盤と国内盤の価格の差のデータ数年分とその間の為替相場のデータ(4)洋楽輸入盤を禁止した場合に国内盤の売り上げがどの程度上昇するかの試算データを複数。このあたりが見えると、どの程度の可能性なのかもう少し幅を縮められると思う。
http://d.hatena.ne.jp/munekata/20040409#p1
http://d.hatena.ne.jp/charlie_k/20040408

  • (追記)関連リンク

小野島さんが書いている

大手のレコード会社の輸入盤セクションは各大型チェーン店に対して、自社が日本盤発売しているCDの輸入盤を大量に、しかもきわめて安い価格で卸していて、おまけに国内盤同様、売れ残った商品の返品や交換を一定の範囲内で許していたりする。

は知りませんでした。これは日本のレコード会社が輸入盤をコントロールしやすいということだから、ファンにとってはマイナス要素ですね。萩原さんと山形さんのコメントはとくに目新しいこと書いてなくて参考にならないけど、一応リンク。音楽業界の情報を知りうる立場にいるプロの人には、小野島さんのように素人にはなかなか知ることのできない情報を伝えて欲しいです。
音楽評論家・小野島大不定期コラム
http://onojima.txt-nifty.com/diary/2004/04/post_7.html
萩原健太
http://www.st.rim.or.jp/~kenta/
山形浩生
http://be.asahi.com/20040410/W12/0025.html

*1:法律案が洋楽輸入盤にも適用可能なように書かれているのは、国際条約上、特定の国の狙い撃ちをした法律は作れないことが理由の一つ、国内アーティストの逆輸入盤のみを輸入禁止したくても、条文上は洋楽輸入盤にも適用が可能なように書く必要がある。今回の騒動の発端となったであろう民主党の議員による質問趣意書は、この基本的なことを知らずになされたもののように思える。もしそうならばトホホな話だ

*2:輸入盤をゼロにして吹っ飛んだ利益を国内盤の売り上げ増で補う保証はあるの?為替相場が変動して価格差が縮まったら?再販制度が廃止されたら?音楽メディアがCDでなくなったら?いったんゼロにした販路を再開するコストは高いよ。