「はてなダイアリーにおけるルールに関する一考察」

http://d.hatena.ne.jp/genesis/20040302
id:mitty:20040302#p1さんのところで知りました。全体としては有益な試みだと思うのですが、細かいところでいくつか疑問に感じた点などもあったので、特に気になったところだけメモ。

  • 第2節

評議会に付託されるということは、ガイドラインという【明文化された社会通念】に照らして一義的に判断が付かない場合、その解釈を論じようとするものである

キーワード「はてなダイアリー評議会」に「そのキーワードがはてな利用規約はてなダイアリーのヘルプに明らかに違反するものではなく」とあります。これは、利用規約やヘルプに明白に反するものについては管理者であるはてなの判断により削除などの処置がなされるが、いわゆるグレーゾーンに属するものについては最終的には利用者の民主的な決定に委ねるということなのではないでしょうか。
つまり評議会は『(「ガイドライン」ではなく)「利用規約」に照らして一義的に判断が付かない場合、その解釈を論じようとするものである』と考えます。
ガイドラインは評議会と並んで、グレーゾーンをめぐる紛争を解決するための手段の一つであり、紛争の事後的な解決手段である評議会と比べると、紛争の予防手段としての性格も併せ持つことが特徴の一つであると考えます)

  • 第2節の注にある

ここでは司法的性格で説明したが、筆者は評議会に立法的性格を持たせることもあるだろうと考えている。即ち、ガイドラインの策定をめぐって対立が生じた時に賛否を問う使い方である。

ガイドラインもキーワードの一つである以上その内容について評議会の議題とすることは可能なのですが、ルールとして強制力のないガイドラインの内容を、強制力のある評議会で決定することに違和感を感じます。かえって混乱を増すだけではないでしょうか。個人的にはガイドラインの策定をめぐって対立が生じたときには、「両論を併記する」のが妥当な解決だろうと考えます。
(追記)はてな管理者の承認が条件ですが、評議会に立法的性格を持たせた上で、議決を経たガイドラインの条項については強制力を認めることも可能ではあります。その場合に考慮すべき点として、

    • 現在評議会の対象である個々のキーワードに比べて、より広範囲に影響のあるガイドラインの条項に強制力を付与する力を、現在のように投票率の低いままの評議会に与えてよいのか。
    • 管理者であるはてなからの授権の必要性(評議会での立法的性格を持った議題の設定により授権があったと看做すことも可能だが、より明確な形での授権があることが望ましい)。
    • 議決の有効期間はどうするか(より広範囲に影響するガイドラインの条項について、六ヶ月程度の期間の時限法として強制力を与えると期間経過後に混乱が生じるのではないか)。
    • 強制力を与えられた条項は他の強制力のない条項と共にガイドラインに記載するのか(混乱を避けるためには、別の名称のルールを作るか利用規約やヘルプといった強制力のあるルールの中に取り込むなどしたほうが良いはず)。
    • ガイドライン中の争いのない条項については強制力はないのに、争いのある条項には評議会を経ることで強制力が与えられるのは一種のねじれといえないか(争いのない条項こそ強制力を与えられても良いのではないか)。
    • ガイドラインに強制力を持たせるならば、法律ほどではないにせよ文言の一言一句に神経を使う必要があると思うが、最終的に二者択一で決する前提としての十分な議論の場が設けられるのか。を挙げておきます。
  • 第4節にある

ワイセツではないが低俗な語句をキーワードとして許容するのかというのが問題点であり、ガイドラインの条項の当てはめ方についての議論であった。これは当該一語のみを射程範囲に置くものではなく、同じような性格を持つ俗語に対しても判断基準として作用する。

低俗な語句がキーワードとして許容されないことは利用規約の(6)禁止事項8に明示されています。議題1号で問題点の一つであったのは、何が利用規約で禁止される「低俗」なのかという判断基準は示されていないが、「ボイン」は利用規約で禁止される「低俗」な語句にあたるかということだったのではないでしょうか。
また、議決の結果が他のキーワードに何の影響も与えないということはありえないのですが(今後のキーワードをめぐる議論のうえで当然に参考にはされると思いますが)、「id:hatenadiary:20031216#1071529964」「id:hatenadiary:20040229#1078037204」で「影響範囲については、議題としてあげられたキーワードのみに適応されるものとしたい」とあり、これは「強制力を伴うような影響」を他のキーワードに与えることはないと解釈できます。どの程度の影響があると考えるかについては議論のあるところでしょうが、どう考えるにしろ議論の出発点として上の2つのはてなダイアリー日記の記述への言及は必要ではないでしょうか。
個人的には現行のような評議会の議題の立て方のもとでは、投票者によって投票(棄権)の理由は様々であるし(単なる好き嫌いで投票している人も多くいる)、(一部の投票者の日記は別として)すべての投票者について投票理由が明示されているわけではない以上、議決結果から、議決の手続きで明示されていない何らかの意味を読み取って他のキーワードにも及ぼすのは困難であるし、危険ですらあると考えます。

  • 第6節について

ここでいうルールは「ガイドライン」を指すもののようですが、ガイドラインには強制力はないので猶予期間を設ける意味はあまりないのではないでしょうか?(登録者が強く反発し「削除には従わない」といえばそれ以上の強制はできないから)
仮にここで言うルールが「利用規約」も含むものであるなら、利用規約で禁止されるようなキーワードはよほど不適切なもののはずであり、即時削除が適当と考えます。削除の手続きをあらかじめ明示し、それに従って削除がなされるならば、過剰な反発は避けられるのではないでしょうか。

  • 追記にある

利用規約よりは下位に位置しますが、利用者が作成するガイドラインよりは上位に位置します。利用規約とヘルプの関係は、さしずめ法律に対する政令のようなものでありましょう。

ですが、形式面では、利用規約もヘルプも管理者であるはてなに制定権限がある以上、上位・下位とするのには疑問を感じます。両者の形式的効力は同位であり、仮に両者に齟齬が生じた場合には「後法は前法を破る」という法学のルールに従い、後に定められたほうが優先されるのではないでしょうか。(最終的には齟齬を解消するべく一方ないし両方が再度改訂されると思われますが)
また内容面では、確かに「ヘルプは、利用規約の解説として管理者が執筆するものであり」という部分もあるとは思いますが、ヘルプにはより技術的な利用法についての記述が多く、両者の守備範囲は概ね異なっていると思うのですがいかがでしょう。
(根拠として、ヘルプが利用規約の解説ならば、ヘルプの各項にはそれに対応する利用規約の項目が存在するはずですが、それが見当たらないものが多い。ことを挙げておきます。)
(追記)
利用規約の「はじめに」にの2項に「本サービス内には「ヘルプ」をはじめはてなの利用方法や注意書きが提示されています。これらも本規約の一部を構成するものですので、合わせてお読みください。」と明記されていました。

  • それと、第1節で「もしガイドラインに反する行為(キーワード作成)が行われようとも、それを禁止できるだけの強制力を持っていない。」と書かれているのですが、第2節以降の記述を読むと、ガイドラインに強制力(またはそれに近い効力)を認めた上で書かれているのではないかと思わせる箇所がいくつかあるのが気になりました。